2023年に続き、2024年も大幅な賃上げが継続することが期待されています。23年の春闘の賃上げ率は30年ぶりの高さとなりましたが、その背景には労働組合だけでなく、政府・使用者側も賃上げの必要性を望んでいました。
政府は「成長と分配の好循環による新しい資本主義」を掲げ、成長の果実を従業員に分配する賃上げを経済界に要請していますが、賃上げを原動力として更なる成長を実現し、日本経済を成長軌道にのせようというのが目的です。
そのため経団連など経済3団体に対して「インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい」と要請し、民間企業の賃上げを支援するための賃上げ税制を拡充など賃上げに取り組む中小企業を支援するための施策も講じています。
一方で、価格転嫁を促進するために下請け取引の適正化、下請事業者への不当なしわ寄せを解消し、中小企業が賃上げ原資を確保できるように「価格交渉促進月間」による周知。
また、中小企業庁の下請けGメン(取引調査員)による実態調査、それと連動した下請法違反による公正取引委員会の指導・勧告体制も強化しています。
こうした賃上げに向けた政府の施策は2024年も引き続き実施されます。中小企業にとって賃上げの原資となるのが大企業などの取引先への
価格転嫁です。原材料費、エネルギー価格、労務費の3つの価格転嫁が進まなければ、賃上げはもちろん企業の存続も危うくなります。原材料・エネルギー価格の転嫁については理解が進みつつありますが、難しいのが労務費です。政府は「労務費転嫁の指針」を示し、取引価格の適正化を強化していく方針です。
一方、24年春闘に向けて経団連も「定昇に加え、ベースアップ実施も有力な選択肢」として、来年以降も「賃金引き上げの実現に貢献していく」と、春闘指針の原案で述べるなど、賃金引き上げの機運は24年も高まると予想されます。