政府の全世代型社会保障構築会議が社会保障制度見直し議論の「中間整理」を公表しました。その制度改革の方向性の一つとして、持続可能な社会保障制度の構築に向けて「支え手」を増やしていくことがあげられています。
日本は少子高齢化により、2040年には65歳以上人口がピークの約3,900万人に達する一方、現役世代は約6,000万人に減少することが見込まれています。このため「中間整理」では、未来への投資として「子育て・若者世代」への支援が喫緊の課題であるとして、男性の育児休業取得促進などの子育て支援策を着実に推進するとしています。
また、すでに2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法では、厚生年金の加入対象拡大に向けて、70歳まで働ける機会の確保を企業の努力義務としたほか、2020年の年金制度改正法では、短時間労働者が社会保険に加入できる企業規模要件を、現行の「従業員501人以上」から今年10月には「101人以上」に、2年後の2024年10月には「51人以上」にまで緩和することを決めており、今後は企業規模要件の撤廃も含めた見直しが検討されそうです。
岸田首相は「働き方に中立的な社会保障制度の構築を目指す」として、「勤労者皆保険」の実現を掲げています。働く人なら誰でも会社員同様、被用者保険(厚生年金、健康保険)に加入できるようにするもので、フリーランスやインターネットを通じて単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」などについても社会保険への加入を促す考えを示しています。
確かに社会保険の適用拡大により、セーフティーネットの拡充が期待できるわけですが、フリーランスやギグワーカーなどの「被用者性」をどう捉えるかなど難しい点もあります。「被用者性」と「労働者性」は深く関連していることから、労働関係へのあつれきを引き起こしかねないだけに慎重な議論が求められます。また、単純に考えれば、社会保険の適用拡大は、保険料等の事業主の負担増につながることから、ハードルは高いといえます。